上海協力機構（SCO）とは？詳細情報と中国の狙い

はじめに

本サイトでは、中国が推進する上海協力機構（SCO）や一帯一路の最新動向、日本の外交戦略やインド太平洋戦略との関係をわかりやすく解説します。また、グローバルサウスとの連携や多国間協力の行方を分析し、国際社会における中国と日本の役割を比較。安全保障から経済協力まで、変化する世界秩序を読み解くための情報を提供します。

目次

ニュースまとめ

上海協力機構首脳会議 習主席がグローバルサウスとの連携を強調

2025年9月1日、中国・天津で開かれている上海協力機構（SCO）の首脳会議で、中国の習近平国家主席は演説し「加盟国が直面する安全と発展の責務は重くなっている」と述べ、アメリカを念頭に新興国や途上国＝グローバルサウスとの連携強化を訴えました。

会議の参加者

今回の会議には、中国、ロシア、インド、イランなどSCO加盟10か国の首脳に加え、オブザーバー国のモンゴル、対話パートナーのトルコやエジプト、ベトナムなどを含む20か国以上の首脳、さらに国連のグテーレス事務総長ら国際機関トップも参加し、過去最大規模となりました。

主な議題と合意

「天津宣言」の発表や、安全保障・経済協力強化に関する文書の採択が予定されています。

各国首脳の動き

• ロシアのプーチン大統領は習主席と立ち話を交わし、2日には北京で首脳会談予定。
• インドのモディ首相も習主席、プーチン大統領と笑顔で会話する場面が見られました。
• インドネシアのプラボウォ大統領は国内抗議デモを理由に欠席。

日本政府の反応

林官房長官は「中国が活発に活動していることを注視している」とし、国際社会を分断ではなく協調に導く外交を展開していく考えを示しました。

上海協力機構（SCO）とは

上海協力機構（Shanghai Cooperation Organization, SCO）は、中国とロシアを中心に設立された多国間協力のための国際機構です。2001年に正式に発足し、現在はユーラシア地域を中心に安全保障、経済、政治、文化など幅広い分野での協力を推進しています。

加盟国

2025年現在、SCOの加盟国は以下の10か国です。

• 中国
• ロシア
• インド
• パキスタン
• イラン
• カザフスタン
• キルギス
• タジキスタン
• ウズベキスタン
• ベラルーシ

オブザーバー国・対話パートナー

加盟国に加えて、モンゴルなどのオブザーバー国や、トルコ、エジプト、ベトナム、マレーシアなどの対話パートナー国も参加し、協力の枠組みを拡大しています。

主な目的と役割

• 安全保障協力：テロ、分離主義、過激主義への共同対処
• 経済協力：貿易、投資、インフラ開発の促進
• エネルギー協力：石油・天然ガスなど資源分野での協力
• 文化・人的交流：教育、科学、文化交流の推進

特徴

SCOは、アメリカやEUが主導する国際秩序に対抗する性格を持ち、特に「グローバルサウス（新興国・途上国）」との連携強化を重視しています。地域の安定と発展を目的にしつつ、国際政治における影響力を拡大しているのが特徴です。

「天津宣言」および安全保障・経済協力強化に関する文書の具体内容

2025年9月1日の上海協力機構（SCO）・天津サミットにおいて、以下の具体的な成果が発表・採択されました：

1. 「上海協力機構加盟国元首理事会天津宣言（天津宣言）」

• 加盟国による署名・発表が行われました。
• 「上海精神」に基づき、戦略的コミュニケーションと集団的意思決定を強化し、地域の平和と安定、繁栄に共同で取り組むことを確認。
• 冷戦思考や陣営対立、いじめ行為への明確な反対を表明し、国連中心の国際秩序とWTOを中心とした多国間貿易体制の維持・強化を支持。

2. 「2026–2035年に向けたSCO未来10年発展戦略」の承認

• 天津宣言とともに、加盟国首脳会議で正式に承認されました。
• 目指すビジョンには、「上海精神の継承」「相互補完」「一帯一路との戦略連携」「貿易・投資のさらに便利化」「エネルギー・デジタル経済・AI・基盤インフラなど新産業分野での協力深化」が含まれます。

3. 世界反ファシズム戦争勝利と国連設立80周年に関する声明

• 第二次世界大戦勝利と、国際協力の象徴として国連創設80周年を称える共同声明が採択されました。

4. 安全保障・経済・人文協力に関する一連の成果文書の採択

• 計24本の文書が採択され、以下の具体的な取り組みが含まれています：

• 「安全脅威と課題に対応する統合センター」「麻薬対策センター」「情報安全センター」「禁毒センター」の設立・稼働 (通称“四つの安全センター”)。
• SCO開発銀行（SCO Development Bank）設立に関する構想による、加盟国への金融サポート体制の構築。
• 安全・経済・人文交流・組織体制強化にかかわる文書の採択。

5. 新たな対話パートナーの承認

老挝（ラオス）が正式にSCOの対話パートナー国として受け入れられ、組織への関与が拡大しました。

日本は上海協力機構（SCO）に参加しているのか？

現時点で、日本は上海協力機構（SCO）に 加盟していません。また、オブザーバー国や対話パートナー国としての参加も行っていません。

理由と背景

• SCOは主に中国・ロシアを中心に設立され、中央アジア諸国を含む安全保障・経済協力の枠組みであるため、日本の外交方針や安全保障体制（特に日米同盟）とは性格が異なります。
• 加盟国の多くはアメリカや西側諸国と対立関係にあるため、日本が正式に加わる可能性は低いと考えられます。
• 日本政府はSCOの動向については「高い関心を持って注視している」と発言しており、直接の参加ではなく、外交的な情報収集や対話を通じて関与する姿勢をとっています。

まとめ

したがって、日本がSCOに参加する計画や動きは現在のところ存在せず、今後も加盟の可能性は低いと見られます。ただし、国際情勢や地域協力の枠組みによっては、対話や協力の形で一定の関わりを持つ可能性はあります。

中国の国際的な動きのまとめ

中国は近年、国際社会での影響力を強めるために多方面で積極的な活動を展開しています。以下は代表的な取り組みとその説明です。

1. 一帯一路（Belt and Road Initiative, BRI）

• 概要：2013年に習近平国家主席が提唱した巨大経済構想で、アジアからヨーロッパ、アフリカまでを結ぶインフラ整備・貿易・投資のネットワークを目指しています。
• 目的：交通・エネルギー・デジタル分野での連結性を高め、中国と参加国との経済的結びつきを強化。
• 評価：経済発展の機会を提供する一方で、「債務の罠」や中国依存の拡大といった懸念も国際的に指摘されています。

2. 上海協力機構（SCO）

• 概要：中国とロシアが中心となって設立された安全保障・経済協力の枠組みで、中央アジア諸国を含む多国間組織。
• 最近の動き：2025年の天津サミットで「天津宣言」を発表し、安全保障・経済・文化交流の分野で協力を強化。
• 目的：西側諸国に対抗する国際的な枠組みの構築と、グローバルサウス諸国との連携強化。

3. 国連や多国間外交への関与

• 国連の平和維持活動（PKO）や国際会議に積極的に参加し、国際秩序形成での発言力を強化。
• 特に「多国間主義」を強調し、アメリカの単独行動に対抗する立場を打ち出しています。

4. グローバルサウスとの連携

• アジア、アフリカ、中南米の新興国・途上国との関係を重視し、経済支援やインフラ投資を通じて影響力を拡大。
• 「南南協力」のリーダー的存在をアピールし、西側主導の国際秩序に対抗する姿勢を見せています。

5. 科学技術・経済戦略

• AI、デジタル経済、再生可能エネルギー、宇宙開発など先端分野での国家戦略を推進。
• 自国の技術力を強化すると同時に、輸出や標準化を通じて国際的影響力を拡大しています。

まとめ

中国は「一帯一路」をはじめとする経済・外交戦略や、SCOや国連などの多国間枠組みを通じて国際社会での存在感を高めています。その狙いは、経済的繁栄の確保とともに、西側諸国に依存しない新たな国際秩序の構築にあります。

日本の国際的な動きのまとめ

日本は国際社会において「自由で開かれた国際秩序」を重視し、多国間協力や同盟関係を軸に外交を展開しています。以下は代表的な取り組みとその説明です。

1. 日米同盟の強化

• 概要：日本外交・安全保障政策の基盤はアメリカとの同盟関係です。
• 最近の動き：防衛費増額や自衛隊の体制強化を進めつつ、米軍との連携を深化。
• 目的：インド太平洋地域の安定維持や、中国・北朝鮮の軍事的動きへの対抗。

2. 自由で開かれたインド太平洋（FOIP）戦略

• 概要：日本が提唱する地域戦略で、法の支配、航行の自由、自由貿易を推進。
• 連携国：米国、オーストラリア、インドとの「クアッド（Quad）」や、ASEAN諸国との協力を強化。
• 狙い：中国の一帯一路構想に対抗しつつ、インフラ整備・経済支援を通じて地域の安定を図る。

3. 経済安全保障の強化

• 半導体やレアアースなど重要物資のサプライチェーン強靭化を推進。
• 経済安全保障推進法を制定し、技術流出防止や重要インフラの保護を強化。
• 対中依存の軽減を目指し、欧米や東南アジアとの経済連携を拡大。

4. グローバルサウスとの関与

• アフリカ開発会議（TICAD）やODA（政府開発援助）を通じて、新興国・途上国との協力を推進。
• 気候変動対策やインフラ投資を支援し、持続可能な発展に貢献。
• 「国際社会の分断を防ぎ、協調に導く外交」を掲げ、中国やロシア主導の枠組みと差別化を図っている。

5. 多国間枠組みへの積極的参加

• G7、G20、APECなどでルールに基づく国際秩序を支持。
• 国連改革や気候変動対策、核兵器廃絶などで積極的に発言。
• 経済連携ではCPTPP（環太平洋パートナーシップ協定）や日EU・EPAを推進。

まとめ

日本は日米同盟を軸に、インド太平洋戦略や多国間枠組みを通じて国際秩序の安定に貢献しています。さらに、経済安全保障の強化やグローバルサウスとの連携を進めることで、中国やロシア主導の国際的枠組みに対抗しつつ、調和と協調を重視した外交を展開しています。

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