【発電コスト比較】石破茂首相「原発ゼロ」を目指す

はじめに

【発電コスト比較】石破茂首相「原発ゼロ」を目指すについてまとめました。

目次

ニュースまとめ

石破茂首相は10月12日の日本経済新聞との単独インタビューで、再生可能エネルギーの活用を進める中で、将来的に原子力発電の比率を低減する可能性に言及しました。ただし、原発比率の引き下げが自己目的ではないとも述べ、エネルギー基本計画の見直しにおいてバランスを取る姿勢を示しています。首相は9月の自民党総裁選挙で「原発ゼロ」を目指す姿勢を打ち出しており、安全性を重視しつつ再生可能エネルギーの推進を強調しています。

原子力発電所のコスト

原子力発電のコストは、単に発電時の運用コストだけではなく、施設建設費、燃料費、維持管理費、廃炉費用、核廃棄物の処理・管理費用、安全対策費用など、多岐にわたります。また、発電所の稼働年数や政策的な要因によっても変動します。以下は、原子力発電のコストに関する代表的な要素を挙げた上で、他の発電方法と比較したポイントです。

1. 原子力発電のコスト要素

• 建設費用: 原子力発電所の建設は非常に高額で、数千億円から数兆円単位の初期投資が必要です。
• 燃料費: ウランなどの燃料費は比較的低コストであるため、発電時の燃料コスト自体は安いとされています。
• 運用・保守費用: 日常の運用や保守には、厳重な安全対策が必要であり、コストがかかります。
• 廃炉費用: 原子力発電所の廃炉には数千億円以上の費用がかかることがあります。
• 核廃棄物の処理費用: 核廃棄物は数万年にわたり安全に管理する必要があり、そのための費用は膨大です。最終処分場の確保や処理技術の確立も難しい課題です。

2. 核廃棄物の処理コスト

• 核廃棄物の処理や管理に関するコストは非常に高額です。特に高レベル放射性廃棄物の処理には、地下深くに隔離する技術などが必要で、長期的に維持管理する必要があります。これに加えて、廃棄物が将来どのように扱われるか不確実な部分が多く、コストは増大する可能性があります。

3. 他の発電方法とのコスト比較

一般的には、以下のようにコスト比較が行われます（コストはkWh当たりの値で比較されます）。

• 原子力発電: 廃炉や廃棄物処理費用を含めると、長期的には安価とは言えない場合もありますが、運用中の発電コストは低めです。
• 火力発電（石炭、天然ガスなど）: 燃料費の変動が大きく、安定的に安いとは限りません。また、環境規制や炭素税によってコストが増大する可能性があります。
• 再生可能エネルギー（太陽光、風力など）: 近年コストは大幅に低下しており、発電単価では競争力があります。初期の設備投資は高額な場合がありますが、運用コストは低く、燃料費が不要です。

4. 総合的な判断

• 原子力発電は、燃料費自体が安いため、運転中は低コストに見える一方で、廃炉や核廃棄物処理のコストを含めた場合、必ずしも他の発電方法より安価とは言えません。また、安全対策や事故のリスクも考慮する必要があるため、長期的な視点での経済性は再生可能エネルギーに劣る場合があります。

政策的な支援や立地条件によっても変動するため、単純なコスト比較は難しいのが現実です。

具体的な金額

具体的な金額として、原子力発電のコストに関する最新の試算は各国で異なる場合がありますが、日本を例にした一般的な数値を示します。原子力発電所の運転にかかるコストや、廃炉、核廃棄物の処理に関連する費用を含めた、1kWhあたりのコストを比較してみましょう。

1. 原子力発電のコスト構成（日本の場合）

経済産業省が公表した2015年のデータに基づくと、1kWhあたりの原子力発電の総コストは10.3円～11.8円とされています。これには次の要素が含まれます。

• 建設費用: 約2円～3円/kWh
• 燃料費: 約1円～2円/kWh
• 運転・保守費用: 約2円/kWh
• 廃炉費用: 約1円～2円/kWh
• 核廃棄物の処理費用: 約0.3円/kWh
• 事故対応・賠償コスト: 約0.3円～1円/kWh

2. 核廃棄物の処理費用

核廃棄物の処理には長期間かかるため、正確な総額は不明確ですが、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の建設費用だけで約3兆円～5兆円が必要とされています。また、これに加えて、各発電所の廃炉費用が数千億円規模でかかります。

• 廃炉費用: 1基あたり3000億円～7000億円（日本の原発の場合）
• 高レベル放射性廃棄物の処理費用: 数千億円～数兆円（長期にわたる保管・管理含む）

3. 他の発電方法との比較

2020年のデータを基に、日本国内の他の発電方法とのコストを比較します。コストはkWhあたりの金額です。

• 火力発電（LNG）: 約12円～14円/kWh（燃料費が大きく影響）
• 石炭火力発電: 約9円～12円/kWh
• 再生可能エネルギー（太陽光発電）: 8円～12円/kWh（導入初期のコストが高いが、技術進展で低下）
• 再生可能エネルギー（風力発電）: 8円～10円/kWh

4. 原子力発電のコストの特徴

• 原子力発電は燃料費が低く、運転時のコストは安いとされますが、建設費用や廃炉、核廃棄物の処理にかかるコストが非常に高額です。
• 事故のリスクや、長期的な安全対策費用を含めると、他の発電方式と比べて必ずしも安価ではなく、特に再生可能エネルギーのコストが低下している中で、競争力は低下しつつあります。

具体的な数値から判断すると、原子力発電の総コストは再生可能エネルギーや石炭火力発電と比較して、必ずしも安価とは言い切れない状況です。

福島第一原子力発電所の事故後に対応するために投入された公費

福島第一原子力発電所の事故後に対応するために投入された公費（国民の税金）は、非常に大きな額に上っています。事故から現在に至るまでのコストは、主に次の要素で構成されています。

1. 賠償費用

福島第一原発事故により被害を受けた住民や企業への賠償金として、総額で約9兆円が見込まれています。この賠償費用の一部は、国（公費）による支援でまかなわれています。

2. 除染費用

事故によって放射能汚染された地域の除染活動には、総額で約6兆円が必要とされています。これも国の予算（公費）によって実施されています。

3. 廃炉費用

福島第一原発の廃炉には、長期にわたる莫大な費用が必要です。廃炉完了までのコストは、現在の試算では約8兆円～10兆円に上るとされています。この費用の一部も、国が支援しています。

4. 汚染水対策

福島第一原発の敷地内で発生する汚染水の処理には、現在も多額のコストがかかっており、そのための施設建設や運用にも国費が投入されています。汚染水対策に関連する費用は、今後も数千億円規模でかかると見込まれています。

5. 総計

これらの費用を総合すると、現在までにかかった費用は約22兆円～25兆円とされています。この額は、国民の税金からも大きく支出されており、さらに将来的な廃炉や汚染対策費用が追加で発生する見込みです。

まとめ

福島第一原子力発電所の事故対応に投入された公費は、総額で約22兆円～25兆円に達すると見込まれています。今後も廃炉作業や汚染水処理が続くため、さらに増加する可能性があります。これらの費用は電力会社（東京電力）だけでは負担しきれず、国の支援が不可欠な状況です。

福島第一原発の事故対応にかかる費用を1kWhあたりに換算すると

福島第一原子力発電所の事故対応に関する費用を1kWhあたりに換算するためには、福島第一原発が事故前に生産した総発電量と、事故対応にかかっている総コストを用いて計算することができます。

1. 福島第一原発の発電量

福島第一原発は、1971年の運転開始から2011年の事故まで約40年間稼働していました。福島第一原発の発電能力（定格出力）は約4700MW（メガワット）で、実際の稼働率を考慮すると、年間の平均発電量は約350億kWhだったと推定されます。

この40年間で福島第一原発が生み出した総発電量を概算すると、

40年間 × 350億kWh = 約14,000億kWh

2. 事故対応にかかる総費用

先ほど述べたように、福島第一原発の事故対応にかかる総費用は現在の試算で約22兆円～25兆円です。

3. 1kWhあたりのコスト計算

これを1kWhあたりに換算する場合、以下のような計算になります。

総費用22兆円～25兆円 ÷ 総発電量14,000億kWh = 約15.7円/kWh～17.9円/kWh

4. 結論

福島第一原発の事故対応にかかる費用を1kWhあたりに換算すると、約15.7円～17.9円/kWhとなります。これに加えて、通常の運転コストや燃料費も考慮すれば、実際の発電コストはさらに高くなることがわかります。

つまり、福島第一原発が生産した電力のコストは、事故対応費用を含めると非常に高額となり、他の発電方式と比較してもかなりの負担がかかっていることになります。

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